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エッセイ「ワークルールを知っていれば...」

こんにちは。

一般社団法人日本ワークルール検定協会のメールマガジンから

エッセイをご紹介させていただきます。

(㊟日本ワークルール検定協会、エッセイ著者の

日本ワークルール検定協会木村専務理事様より

転載のご了解は得ております。)

 

        

  一般社団法人 日本ワークルール検定協会
       専務理事 木村裕士 氏

 

エッセイ「ワークルールを知っていれば...」
働き方改革進む韓国映画界をみて思うこと

 

1.韓国芸能界躍進の真因

最近の韓国芸能部門の躍進は目覚ましいものがある。
「パラサイト 半地下の家族」は2019年のカンヌ映画祭
パルム・ドール賞、米国アカデミー賞では作品賞など複数を受賞、
ご存知、歌って踊れるボーイズグループ、BTSはビルボード
トップ賞を勝ち取り、世界中でファンを獲得している。

直近では、日本の是枝裕和監督による「ベイビー・ブローカー」で
主役のソン・ガンホカンヌ映画祭で最優秀男優賞をアジア人として
初めて受賞した。
この流れをつくったのは実は金大中大統領だ。
1997年の韓国IMF危機の直後に就任した金大統領は、
国策として芸能部門の輸出を進めた。
日本の人口が1億人を超えるのに比して、韓国は5000万人。
マーケティングもなかなか難しい規模で、国内需要だけでは
成長は限界がある。だから最初から海外に目を向けて、
国策として支援し、K-POPや韓流ドラマを猛烈に輸出していった。
もちろん日本も韓流ブームに席巻されることになったのは言うまでもない。
世界に打って出て成功を収めている韓国と国内市場でなんとか
生きている日本、今日の話はそこが中心ではない。
 

2.映画界でも労働時間規制の韓国

たまたまニュース番組を見ていたら、カンヌから凱旋帰国した
是枝裕和監督に対するインタビューがあった。
韓国では映画の撮影現場では週に52時間の労働時間の上限があり、
4日働いて3日休むような感覚で肉体的にとても楽だったと語っていた。
徹夜の撮影があれば翌日は休日になるという。
韓国も以前は日本と同じで、契約とか労働条件という
言葉を出しただけで使われない憂き目にあうような状況だった。
請負契約で労働基準法が適用されない映画スタッフの長時間労働
低賃金が当たり前だった。2005年に全国映画産業労働組合が結成され、
労働契約の締結、4大保険加入
国民年金国民健康保険雇用保険労災保険)、
労働時間の毎日の記録という運動を展開。
2015年には労働契約締結と労働条件の明示、
賃金未払いや標準労働契約書を締結していない場合は
映画発展基金から財政支援を得られないなどの内容を含む
「映画およびビデオ作品の振興に関する法律」
の改正案が可決された。
それ以降、標準労働契約書をつくった作品は毎年増えて、
2018年時点では8割近くまで達しているという。


3.ワークルールを知っていれば
 是枝監督はメディアに再度登場し、他の仲間の映画監督たちと
フランスの「国立映画映像センター(CNC)」などを参考に、
業界の労働環境改善に向けた共助システムの構築を目指す
団体を設立したと発表した。
映画界で被害が相次ぐハラスメント防止に関する
ガイドラインの草案も作成したという。
でもそれで本当にいいのか。
最近は連合もフリーランスで働く人たちにも目を向けて、
労働組合づくりにつながるよう支援をしているようだ。
ヨガのインストラクターやウーバーイーツの配達員の組合も
すでにできている。
共助システムの団体をつくったところで労働組合のように、
あらゆる権利が法的に強固に保護される存在には
なりえないことを多分知らないのであろう。
わが国では労働組合を簡単に結成できる。
ワークルールを知っていれば、共助団体などわざわざつくる
必要はないと気づくはずである。
大衆への影響が大きい産業でこそ、ワークルールの普及啓発が
必要であると思えてならない。
我が国芸能界は産業としての国際競争力は韓国に後塵を拝すばかりか、
労働環境も遅れを取ってしまっているのは極めて残念である。【了】