「人とのつながり」を通しての「誇りの継承」
当法人が本年7月21日に開催した「労働映画祭2018/第50回労働映画鑑賞会」において、上映映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』鑑賞後に「~働くものの困難と福祉社会の現状をめぐる対話~」が行われました。大変、充実した内容の対話でしたが、当日参加された皆さまから、対話の内容を紹介してほしいという要望が出され、それに労働映画祭2018事務局がお応えし、対話の一部を要約、編集いたしましたので公開します。(文責は働く文化ネットにあります)
・ 労働映画祭2018「対話」報告
~開催内容~
NPO法人働く文化ネット主催 「労働映画祭2018/第50回労働映画鑑賞会」
開催日 2018年7月21日(土)
上映映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』鑑賞後に行われた「対話」
タイトル「働くものの困難と福祉社会の現状をめぐる対話」
~講師~
宮本太郎(みやもと・たろう)氏 中央大学法学部教授。政治学者。
井坂能行(いさか・よしゆき)氏 岩波映像顧問。
~司会~
鈴木不二一(すずき・ふじかず)NPO法人働く文化ネット理事
~報告の見出しから~
●鑑賞後の感想は「悲しみ」「怒り」「元気をもらった」
●イギリスにおける福祉政策の変化と日本
●ケン・ローチ監督作品の独特な雰囲気づくりの手法
●大切な人との「出会い」と「誇りの継承」
●映画に登場してこない労働運動
●孤立しないために一歩踏み出す勇気
~報告のコメントから~
宮本:我々は労働運動とか社会運動というと、理念とか大義や政策の一致点とかいう
話になりがちですけれども、ケイティがフードバンクで空腹のあまり食べ物に
むしゃぶりついてしまったときに、「君は決して悪くない」といって、ケイティに
ダニエルが駆け寄って言うセリフ、あの言葉でケイティがどれだけ救われたのか。
つながることだけで苦しみが癒されるのですね。それだけではなく、最後の葬儀の
場面でのケイティの胸の張り方を見ても分かるように、本当に威風堂々なのですね。
あの力というのは、どこからわいてくるのかなと考えると、つながりを通しての
「誇りの継承」というテーマに思い当たります。
井坂:ダニエルが職安の壁に落書きをする場面で、一人躍り出ててきて演説するよう
な男性がいます。なんとなく彼に目がいきますが、道の反対側にいる大勢の人たち
が面白いんですね。道の向こう側には、本当になんか踊り子みたいな、いわゆる
三流の場で踊っているような踊り子みたいなのがいたり、なんて言うか、山谷、
釜ヶ崎的な人がいたりとか、まさにいろいろな庶民であったり、ちょっと取り残さ
れた層であったり、あるいは逆境に追い込まれたりした層である人たちが、ずっと
あそこに集まって、ダニエルに喝采します。あの辺もケン・ローチのやってみたか
ったことではないでしょうか。内心でこうした出会いの瞬間を望んでいる面もある
のではないかと思います。